彼はあんまから、西国寺、千光寺、浄土寺、それから、講談本にある拳骨物外の寺、近い所では鞆の津の仙酔島、阿武兎の観音、四国では道後の湯、讃岐の金刀比羅、高松、屋島、浄瑠璃にある志度寺などの話を聴いた。彼は東京からの夜着その他の荷の着くまで一週間ほど、どこか旅してもいいと考えた。
あんまは話に気をとられると、だんだん弱くなった。
「もう少し強くやってくれないか」
あんまは急に強くしだした。ちょうど水車の杵が米をつくように肩の上でぐりぐりと乱暴にひじで肉をつきおろした。
「なんという流儀だね?」
「長崎の緒方流と申しやんすけん」
彼は前日新橋で別れて来たハイカラな緒方と、この薄ぎたないあんまの緒方流とで、なんという事なし、一人微笑した。 |